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髑髏の無添加。絶唱。

ESSAY

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 夜半遅くバーで呑んでいると、旧知の作曲家の友人がピアノで弾いたメロディを強制的に聴かせた後、アイドルの唄うラブソング、とりあえず月光というテーマで詩を書いてくれ、今夜のうちに此処で、などと唐突に言う。

 俺はいい具合に酔い緩々していたので、面倒なことは避けて生きてゆきたかったがそういえば以前、よかばいなどと博多弁を言いつつノリで安請合いした気もする。となれば無下に突っ撥ねる訳にもいかず、此処で、今夜!と鸚鵡返し感嘆驚愕しつつまごまごし、無理かな〜時間的に、酔っちゃってるしね、ビバ!などと陽気に呟きつつやんわり断りの旨、雰囲気を醸成してみたが、スルー、シカト、まるで取り合ってくれず、尚も、こういうのは勢いでやった方がいいんだよ、気楽にさパパッと、自由にやってくれていいからさ、などとニコニコ軽快に強硬し依頼してくる。

 作詞など初めての事であったが自由にやっていいというし、己の蒔いた種、引き受けることにしたのははっきり言うと作詞印税による富裕が目当て、つまり具体的にいうと本鮪、地名の付く和牛等を日本家屋の料亭、中庭を横目に長廊下、通されたピシピシ畳が敷き詰めてある個室、土壁風情、床の間には武骨な造形つーかなんか子供が適当に拵えたって感じの明後日の方向に歪んだ瓶に可愛らしいお花が一輪、控えめに搖れる粋、みたいな雰囲気のど真ん中で酒を呑みつつ、順繰りに供される色々の趣向による調理、味付け、彩りでそれらを食しかつ高笑いするという殿様の如き贅を手に入れるべく俺は既に十分満ちていた酔いに任せて身を奮い起たせ創想、暫く頭蓋内沈想、したら劇烈に眠くなって来、帰って眠りたいな〜ビバ!とか思いつつの内、いよいよ眠りに堕ちる寸前、踊り出てきたのは、

 

 見上げれば翳む淡光 AKG47の思い届くか今宵舞雪の月に

 バスタブに搖れるクラゲの髑髏

 

 であった。

 何、なんなの、何処がラブソングなの? 髑髏ってラブ感ないじゃん全然、デスやん、デスメタルじゃん馬鹿!カピバラ!などとヒステリックに罵倒してくる人があるかも知れないが、しかしかつてローリングストーンズのキースリチャーズが言い放った、人間なんて一皮剥いてしまえば、皆一緒さ。という言を知る者は、そのぶっきらぼうで大雑把な、でも美しい愛の煌めきをそこに感ずる事が出来るだろう。

 しかし、ラブソングなのに髑髏などと書いたのは、実はキースの言葉を思っての事ではない。ここ二日、迫る展示に向けて髑髏の写真をひたすらプリントしていたからであり、僕のリアル頭蓋の中は〆切に追われる格好で髑髏で飽和、きゅうきゅうだったので、それが自然に転がり出たという事であろう。つまり自然体。ナチュラル・ボーン、無添加、みたいな。

 また、説明は不要だろうがAKG47というのは、当然、忠臣蔵赤穂義士四十七士の事である。仇討という過激であったとしても言うまでもなくここにもまた愛が溢れている。汪溢。

 ということで、これは究極の自然体ラブソング、売れる事疑義の余地無く、CD売上のみならず、ドラマの主題歌になる可能性も高く、となればカラオケで熱唱する者が続出する事違いなく富裕贅を確信、来たる栄華を噛み締めつつ俺は悦に入り一字一字書き留め、少し離れた椅子で酩酊しつつバーテンと談笑しながら待っていた、作詞をオファー懇願した友人ミュージシャンに自信満々渡したら、港に打ち捨てられた雑魚を見る如き眼差しを向けられた挙句、無言のうち殴られた。

 俺の富裕は月夜に脆く散った。

 ビバ。無添加。絶唱。