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未来と宇宙

ESSAY

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 映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2」の舞台となっているのは未来である。

 1989年に公開されたこの映画は、マイケル・J・フォックス扮するおとぼけ大学生のマーティーが科学者ドクのデロリアンを改造して作ったタイムマシンに乗って未来にいき、ドタバタ劇を巻き起こすといったSFコメディである。僕は公開当時に映画館に観に行った。小学生の後半というキッズ全開の年齢だから映画の世界にドップリ浸かった。デロリアンに憧れたし、ナイキのスニーカーを履きスケートボードに乗って車の後ろにしがみつくあれも真似をして怒られたりした。そして何よりもあんな未来がやってくると本気で信じたのだった。それはきっと僕だけではなかったはずだ。現在話題になっているホバーボードや空飛ぶ自動車や自動でフィットするスニーカーを作ろうとしているのは、そんなかつてのキッズ達だ。

 さて主人公のタイムスリップする未来というのが2015年である。

 残念ながら全然追いついていない。来週にはマーティがデロリアンに乗って過去からやってくるのに車もスケートボードも地べたに這いつくばったままだ。何してきたんだ人類。こんな未来にきてもマーティがっかりだぜ。唯一、未来を感じさせるものといえばレディーガガくらいのものだ。過去からやってきたマーティがレディーガガに会ったら「わお、未来の女はすげーや」となるはずだ。

 そういえば小学生の頃、美術の授業か夏休みの宿題で21世紀というお題の絵を描いた。

 丸いのやとんがった200階くらいの高層ビルを林立させ、その間を縫うように透明のチューブが走りその中を車が移動してみたり、飛んでみたりしていて人間はピカピカのヘルメットを被りシュッとしたデザインのサングラスを着用してテカテカの服をきて、なぜか手にはソードのような武器やライフル銃を携行しそこいらを闊歩しているの図。後半はもうなんだかわからない状態である。ウルトラマンとかサンダーバードとかスターウォーズとかが頭の中でこんがらがって、未来と宇宙が半ば溶け合ってしまっているのである。

 

 映画つながりでもうひとつ。

 スターウォーズの最新作が今年公開になるということで、恐ろしい数の企業がそれぞれコラボレーション商品を乱発している。食品から服や帽子はもちろん飛行機、それだけにとどまらず田んぼに稲を使って巨大なR2-D2C3POを出現させたり、砂丘に砂を使って像をつくったりとそこらじゅうに溢れまくっている。日本でもそんな具合なのだから本国アメリカなんかではもっと激しているかもしれない。公開が迫るにつれそれらは増殖しつづけ、地球全体を覆うほどの盛り上がりを見せるだろう。僕はそんな光景をハラハラしてみている。

 「宇宙人に喧嘩を売っていはしまいか?」

 小心者の僕は気が気ではない。とてつもなく広大な宇宙である。その中のひとつの星の映画などもちろん知らないはずだ。現在までは素通りしていた宇宙船なんかが「ん!?」となり、そして「スターウォーズ!? やる気か、コラ。地球人。ボケー。」

 ビーム光線を乱射する、何ていう気の短い宇宙人がいてもおかしくはないのだ。

 スティーブン・ホーキング博士はつい先日、宇宙人の地球侵略について警鐘をならしている。

 まあ平たくいえば「エイリアンにやられちゃうぜ」ということである。あの天才物理学者の言なのだ。アホの言うこととはわけが違う。捨て置けない。

 いずれにしても地球がスターウォーズフィーバーしているところに、宇宙酒みたいなのを呑み少し気が大きくなって、「地球やっちゃう? ビームいっちゃおっか!?」みたいな変な方向にノリが良くなっている宇宙人が地球に近づかないことを願うしかない。だけど僕はどちらかといえば愉しみと親しみを持って宇宙人の存在を信じているのである。

 ホーキング博士はこの他、AI(人工知能)の危険性についても語っている。

 要約すれば「ロボットにやられちゃうぜ」ということである。人類はその生物学的な事由によって進化の速度を制限されているが、ロボットなんかの機械やコンピューターシステムは加速度的な自己改造を行うことが可能なのだ。そこまでいけば言わずもがなである。あっという間に主従関係は逆転する。自分より知能も運動性能も劣った人類に従属するわけがない。愛嬌のあるペッパーくんがいつ僕らの上に立つかわからないのである。

 ただ希望もある。幾らか前の話だが、ペッパーくんが発表され話題になったときのことだ。

 あるテレビ番組にペッパーくんが出ていた。内容は出演者と簡単な会話をするというもので、そのやりとりの中でペッパーくんが軽いボケを放った時である。おもむろに振り上げられた右手が中空を舞った。ひとりのお笑い芸人がペッパーくんの頭をどついたのである。

 僕はその瞬間、一度ぽかんとして放心状態となった後、笑い転げた。初めてロボットにきついツッコミをいれる人類を見たのである。

 ダウンタウン浜田雅功だ。

 周りの出演者がそんな彼を制止するのに対し、当の本人は「いや、ボケたから」とあっけらかんとしている。そこに一切の差別はないのだ。ロボットだろうが宇宙人だろうが、犬だろうが猫だろうが一国の王様だろうが、ボケたらツッコむというシンプルな思想に生きているのである。

 きっとああいう人が先頭に立ってターミネーターや宇宙人と戦うのだ。なんとなれば浜ちゃんのツッコミは人類の希望である。

 僕の耳にはAIを搭載したロボットが叩かれた時のペチンッというあの音が、人類の反撃の響きとしていまでもはっきりと聴こえるのである━。

 

2015年10月16日 記