観戦の愉しみ

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 今年も夏の甲子園が盛り上がっている。正式には全国高等学校野球選手権大会というのらしい。なんとも長ったらしくて勿体ぶった名前だ。特に野球好きというわけでもない、というかまったくの門外漢の僕でも、夏の甲子園はBGM代わりにという感じで、作業場でなんとなくテレビを点けっ放しにしている。まじまじと聞き入ったりはしないが、観客のワッという歓声や解説者の伝える緊迫した雰囲気がテレビから漂い出すと振り返って見入るといった具合である。

 窓を開け放している家の中まで届くセミの鳴き声、混じる金属バットのあのキンっという音、試合開始のサイレン、どこかの学校の校歌。心地よい夏の風物詩である。今の時代、強制や規則ではないと思うが、球児達は相変わらずほとんどみな丸坊主である。僕の高校時代も野球部の連中はみな頭を丸めており、それでもなんとかオシャレにして女の子にモテようと考えた結果、眉毛などを必要以上に刈り込んでみたりしていた。肩に掛けた大きなスポーツバッグや球児の持つハツラツとした笑顔がなければ、ほとんどチンピラである。涙ぐましい努力である。

 夜になると今度はプロ野球である。酔い酔い眺めていると、選手のズボンの感じがどうもおかしい。見ていて違和感がある。ものすごく気になる。よくよく見てみるとなんだか裾が長く、もちゃっとスパイクに覆いかぶさっており、ズルズルしていて地面にこすりそうな勢いなのである。また少し裾が膨らんでいるようになってパンタロンみたいである。いよいよヤングマンの頃の西城秀樹に見えてきて、ひとり吹き出してしまった。ハイソックスでシュっとしている選手もいるので、きっと好みの問題なのだろう。

 他にも変わったところがないかと、真剣にみているとピッチャーのグローブもなんだかおかしい。アップになった際によくみてみると、なにやら編み込みのあまった革紐をそのまま長く残し、これまた西城秀樹かプレスリーの腕から垂らした飾り紐みたいにビラビラさせているのだ。ボールをキャッチする際、引っ掛かってワチャワチャしないかとピーゴロなんかになると、そればかりが気になって仕方がない。心配のあまりテレビの前でこっちがワチャワチャしてしまう。キャッチャーはキャッチャーで一頃と比べるとなんだか装備が近未来っぽいし、ヘルメットはトンガっているし、ちょっとしたサイボーグのようになっている。ジャイアンツに至ってはユニフォームが変な光沢で煌めいていて、合わせ技でとんでもないことになってしまっているのだ。

 いやいや面白い時代になったものだ。そのうち短パンのやつとかジーンズのように膝小僧あたりが破れているやつとかノースリーブのキワモノなんてやつも出てくるんじゃないか。いつの日かそんな姿を僕にみせてくれるのは、いま甲子園で熱戦を繰り広げている丸刈りの彼らなのかもしれない。

 メジャーリーグなんかでも見ていて僕が面白いと思うのは、ロングヘアの三つ編みやドレッドヘアーだったり、顔半分くらいのとんでもない髭もじゃだったりがいることだ。それぞれが自由な感じでとてもいい。例えば僕がプロ野球選手だったら、今は髪が長いからてっぺんだけ残して他は剃り込んでラーメンマンみたいなのもインパクトがあっていい。往年の長嶋茂雄みたいに大振りで三振した際に、派手にメットを飛ばしてラーメンマンヘアーを見せつけるのもいい。

 アクセサリーなんかにしても、日本のプロ野球選手は数珠とかパワーストーンのブレスレットだったりするが、メジャーの選手はヒップホッパー並みにごついゴールドをじゃらじゃらさせているのである。趣味の良し悪しは別にしてこんなのを見ているとやっぱりメジャーだなーと感心する。サッカーやバスケットや陸上競技なんかでもそうだが、海外の選手のそんなところが見ていて飽きない。サッカー選手やバスケット選手はもうとにかくゴリゴリの刺青が目立つ。

 いつだったか、NBAの開幕試合が日本で開催された時のことだ。梵字・漢字ブームでまったくトンチンカンな文字が彫ってあったり、日本のテレビ放送ではNGな言葉があり、終始テーピングで隠していたりした。この前見たオリンピックの陸上選手なんかでもジャマイカ代表の女子選手だったりなんかは、頭をどぎついピンク色に染めたりなんかしている。それでもって100M走で一番にゴールを駆け抜けるのだからより一層華やかである。

 ピンク頭といえば、やっぱり僕にとってそれはロッドマンだ。

 元NBAスター選手、悪童デニス・ロッドマン。まずビジュアルからしてものすごかった。全身を覆う刺青、たくさんのピアス、そしてピンクや黄緑、虹色に染め上げたり、青色で漢字の”防衛”と書いてみたり、ころころ変わるカラフルなヘアスタイル。乱闘は当たり前、審判に頭突きまでキメる。さらに機嫌が悪かったりすると、ゴール下のカメラマンの股間に蹴りを放ったり、やりたい放題大暴れだった。現役の時からコートの外でも色々話題に事欠かない人物だったけど、現在でも唐突に北朝鮮に行ったりなんかして、時々世間をあっといわせたりする。

 帰国後のインタビューでは

「キム第一書記はいいやつだった」

と、顔中にピアスをぶらぶらさせながら、さらっとそんな事を言ったりして、コートを離れた現在でも相変わらず僕を楽しませてくれる。

 いつのまにやら甲子園からロッドマンにまで話が飛んでしまった。

 

 ところで、いつからなのかはわからないが負けた高校の球児が泣きながら土をかき集めて記念に持って帰るのが恒例となって、カメラマンのお決まりのカットとなっている。球児が跪いて土を集める。カメラマンはそれを下から煽るように撮るので、地べたに這いつくばる。今度はそれら全体をテレビカメラが映しているから、現場はなんかものすごい光景となるのである。

 さて、土を持ち帰るあれは優勝校なんかはどうなんだろうか。勝ってもやっぱり持っていくんだろうか。そのようにして全国に持ち帰られた甲子園の土は、仏壇に供えられたり、もしくは母親が、息子があれでおすそわけです、かなんか言って近所のおばちゃんに勝手にくばってみたり、あるいはもっと最大有効活用され球児本人が「甲子園の土だぜ」かなんかいって恋人にネックレスのロケットなんかにいれてあげてみたりするんだろうか。

 それから気になるのはもう少し時が流れた後のことだ。やっぱり最後は遺族によってユニホームやグローブなんかと一緒に棺桶にいれられてあの世まで持っていかれるのだろうか。それとも引越しの際に意外とあっけなく本人の手で、エイヤっとゴミ箱や近所の公園に放り込まれてしまうのだろうか。あるいは、あら鉢植えの土にちょうどいいわ、なんてつぶやく事知らぬ女房に使われてしまう運命なのだろうか。

 今年も高校球児達が甲子園球場で青春を燃やしている。