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えっちゃや

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 「転がるマドレーヌはコロコロ、丸の内本店」という激ポップスバンドをメンズ4人で結成したので、祝いとして酒宴を行う運びとなった。
 何ゆえの祝賀かというと、当然、紅白出場決定及びミリオン達成のということである。
 結成したばかりじゃないの?という人があるかも知れないので言っておくと、もちろんこれは未来からの前借りということだ。
 ではなぜそんな事が可能なのかというと、やっぱりコレステロール値って気になるよね、みたいな会話で盛り上がる三十も半ばを越したメンズ、が寄り集まって、基本踊りながら歌い、ときたま咆哮というゆるふわバンドをバイト感覚でやるという資本主義の爛熟、を通り越し腐熟した狂気を世間が放っておくはずはなく話題沸騰、即メジャーデビュー、のちミュージックフェアーに出演、馬鹿売れ、ということが容易に予測、予見されるからで火を見るよりも明らか、つまりセレブの仲間入りは間違いないやん、ということが出来るからである。で酒宴、で欠かせぬ酒を購入すべく商店に走った。

  僕の家から最も近い酒の買える店というと、幹線道路沿いにある食料品も扱っている酒店である。
 僕は酒を飲むので、よくこの店で買い物をするのだが、ここは通常の商店街などにある酒屋とは趣きが少し異なり、世界各国の酒類、食料の輸入品全般を扱っているワールドワイド・ノーボーダーというピースフルバンドみたいな、それがコンセプト、ウリと言ってもよく、まずビールやワインなどはそれぞれ50種類くらいあり、見たこともない海外製激安発泡酒及び、下町のポセイドンみたいな市井派の焼酎から、貴族豪族が好んで飲むんではなかろうか、という数万円の高級葡萄酒、それからうちの家賃と同じくらいもするブランデー、ウィスキーまであり、眺めているだけで、階級というか、貧富?みたいなのをビンビンに感じる事ができる、きわめて刺激的な店なのである。
 その他にも袋麺や菓子なども商っていて、陳列棚はさらなる賑わいをみせるが、貴族向けのプラチナ揚げ、金粉チップスみたいのんではなく、こちらは俄然庶民派、例えば、かっぱえびせんなんだけど、かっぱえびせんじゃないっす、みたいな東南アジアのどこかの国で作られた揚げせんや、ドンタコス風ドントコイみたいな中南米レッドペッパーもの、カライムッチャみたいなのもありギャグ勇躍、全く飽きさせず、愉快にショッピングする事ができる。
 さらに貴族向けコーナーにはヨーロッパ産のチーズ類、カビでコーティングされてあるものや、ネズミが齧る絵でよくみる穴がぽこぽこあいてモグラ叩きができそうなものがあり、でもモグラが出てきたからといってすぐ撲る、どつく、打擲しポイントをゲットみたいなゲームはどうかなやっぱり、同じ地球に暮らすものとして優しくないよね、と思ってみたりしつつ、隣には他に獣肉、ハム、ソーセージ、サーモンの燻製、オリーブオイル漬けの魚がグングン詰まった缶詰なんかの欧米的肴が展開され、となると舶来食品の代名詞パスタを全面的にカバーしてあるのは必然、イタリア全開、素麺ほどの細さからうどんに掛けての様々な太さを打ち揃え、かつリボン、ネジ、ギザギザなどの麺状になっておらないやつ各種に加え、ピスタチオの剥き殻様のものや、テレビ観ながら親指で適当に潰しましたよ、みたいな投げやりな形状のものまであり、興味を持つのだけど僕は料理をしないので、見遣ることだけに止めようとしたが、いつの間にか横に居た幼稚園くらいのキッズ嬢が「買わないの?」という風なつぶら眼、わしを凝視しておるので堪らず「今夜はパスタにしようかしら」と呟いてみせカゴに入れて購入、のちしばらく放置してあった、イタリアのおばはんがテレビ観ながら親指で適当に潰しましたよ、みたいな形状の家庭的パスタを茹でてアルデンテ、バンドのメンバーと今日食べた。

  テレビを観ていたらニュースで、とらやの紙袋に現金を忍ばせた上で「羊羹でございます」と越後屋、中を確認した代官「えっちゃやよ〜、おぬしもワルよの〜」という時代劇がリアル・ナウだったのに驚いたので、バンドの任を辞することにした。