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三節棍の打痕的コスモとシウマイ

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 朝目覚めると、右腕のTシャツの袖のあたり、ちょうど見え隠れするところに茄子の浅づけが張り付いていた。

 残酒のぼんやりした眼でもう一度みてみる。茄子というのとは違う、どうもしっくりこない。寝ぼけた脳でしばらく黙考、のちピータンというワードが踊り閃き、合致合点、納得し、あ、ピータンやん、と布団の中で音にしてみもし、スッキリしたわ、という事でもう一度眠ろうと眼を閉じてみたが、腕にピータンが張り付いているという事実が頭をもたげ、捨て置けぬ、食べた事ないやんピータン、起き上がって再度確認してみると、茄子でもピータンでもなく、打ち身から来るアザであった。

 ただ、アザには違い無いが実に見事で、綺麗な円形をしており紫で緑で黄色、複雑に混じり合ったグラデーション、出すとこに出せば、メダルや賞状などが頂けることは間違いなく、となると受賞のスピーチなどもせねばならぬので少し練習しておこうかな、と思いながら、なるほどさらによく観察してみると、ピータンというよりも、どっかで見たことあるな、と思ったらNHKのテレビ番組でみたコスモ(小宇宙)、NASAなどが発表するハッブル宇宙望遠鏡で撮影したという銀河系のそれであった。

 朝目覚めると、腕にコスモ(小宇宙)が在った。などというと、小説の始まりのようでワクワクするが、実際はズキズキして痛いだけであり、色なんかも気色よくないし、だが形だけは綺麗な円を成しており、それは例えばジャッキーチェンの映画に出てくる武術の達人、ちょび髭にオカッパという風体でもって、みっつに分かれた棒を金具で繋ぎ合わせた三節棍をわきの下や腹、首などに巧みにびゃんびゃん行ったり来たりさせた上、ほぁーなどと叫び威嚇、のち繰り出す一撃による打痕、がしかしここ数日の内にそんな中華武器による打撃を喰らった憶えはないし、では何故か、と軽く考えてすぐ思い当たったのは自転車のハンドル、昨晩、呑んでの帰宅途中で、派手にすっ転んだことを思い出したのである。と同時に僕はそのままぶっ倒れているところを、道行く親切な人に助けて貰ったことを、昔みた映画みたいな感じに朧げにだけど確実な記憶として想い出した。ズキズキするコスモを摩りながら助けてくれた人に感謝した。

  さてではなぜ腕に三節棍の打痕的コスモを拵えるまで酒を呑んでしまったかというと、おそらくストレスが溜まってあったからで、ではどうしてそこまでのストレスが蓄積したのかというと、崎陽軒の昔ながらのシウマイ15個入りが、2回連続で品を切らしてあったからである。

 住み慣れた家を離れ仕事などをこなし、ようよう大阪から疲れて帰ってくる唯一の希望、ビールとシウマイ、ビールでシウマイ、昔ながらの、というのが600kmの長旅に対する真っ当な対価であるはずで、もし仮に大阪から、新幹線に乗る段階ですでに新横浜駅においてシウマイが売切れ御免、という事が知れた場合、わしはもう東京には帰らん、という人も続発するだろうし、そこまで言わぬまでも新大阪のホームでバムバムに地団駄、足が痺れ独り悶絶、でもやっぱり食べたい、さらには陶器の醤油注しのひょうちゃんをフルコレクションしたい、というのが庶民の細やかな願いであることに異論を唱えるものはないはずだ。

 でも真空パックのがあるでしょ〜、と優しく慰めてくれる親切な人があるかもしれないが、僕の家にはほとんど調理器具がない上、電子レンジは数年前にチンといわなくなって、のち仕事放棄、廻らなくなって何も温めなくなったけど、処分するには勿体無いくらい頑丈なのでとりあえず乾物などを入れるロッカーと成り果てており、先の親切な人に、斯様な事情で真空パックのでは駄目なんです、と答えようと思ったが、こういうのがいいんじゃないの?という閃きがきらめいたので書いてみる。

 まず会計の時に店員さんが、現金ですか、カードですか?みたいなノリで「電子レンジはお持ちですか」と気さくに訊ね、戸惑いながらも「ありますけど」と答えたキッチンが電化してあるレンジな客々には真空パックを勧めるよう努め、それでも普通のやつを求める客には、お客様のその行為によって新大阪や京都でバムバムして足がビリビリする人があるのです、という事をやはり涙ながらに、かつレジ脇に配置しておいたバムバム図のイラストや写真を掲載したボードを手にお伝えすべきで、にも関わらず、切り捨てるように普通のシウマイを所望するような輩には、女性店員が頰っぺたを膨らますなどし、ツンツン感を少し醸し出し代金のやりとりをするような対応をする事によって、むしろそのツンツンを求める客なども現れるだろうし、しかし、やっぱり笑顔の方がよいから最終的には9割方、真空パックを購入するだろうという事が予測され、という事はツンツン客の分、売上が上昇するという事ができ、それを計算した上で多めに、普通シウマイを新横浜駅に配置、結果、全ての者がビールとシウマイ、ビールでシウマイ、ツンツンと笑顔、を出来るのではないでしょうか〜。と語尾を伸ばして崎陽軒の偉い人に嘆願懇願したい。と考えている。