青の洞窟、ゾンビ伯爵

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 鼻の穴が青かった。何だかガガーリンの言葉みたいだ。

 以前テレビで観たが、世界には青の洞窟というのがあり、火山活動による溶岩や地殻変動による隆起、経年による海岸浸食など理由は様々だが、海の中に出来た空洞に絶妙な具合に光が差し込み、激烈に透明度の高い海水がそれを受けてエメラルドグリーンやブルーに輝き、感動的な光景を生み出すまさに自然、地球の神秘、奇跡、みたいな事が起こるので、ドキュメンタリー番組では旅人としてナビゲーター役になった女優などが、その場所を目指し狭い入口を小舟に乗って突き進んでみたり、あるいは入口が水中にあった場合、ウェットスーツを着、激烈に圧縮した酸素のぷんぷんに詰まったボンベを担ぎダイブ、スキューバし、中途カラフルなお魚などと戯れたりもし、たどり着いたのちには、その世界に身を浮かべ、しばらくの間その光景に酔いしれ、「世界は本当に美しいですね、生きてるって素晴らしい」などと感動を何とか言葉にして伝えようとするが、時にはあまりの美しさに絶句、涙、感動している姿だけが捉えられ、それを見ていたこっちも感涙、さらには、行ってみたいな、泳げないんだけど、と思ってしまうのであるが、夕方、僕の鼻の穴もそんな風になってた。

 その事に気が付いたのは、一日の仕事を終え、今しがたコンビニで購入してきたタマゴサンドをテレビ眺めながら食べ、かつ舶来の赤ワインを呑んでおり、たまたま流れてあった国際ニュースをふんふん関心しながら見ておったら、わしは何だか伯爵みたいだなと悦に入り、気分上昇、口髭でも拵えようかしらと鏡に目をやった時であった。

 鼻の穴が両方とも蒼くかつ輝いているのは、何故かと考えてすぐに思い当たったのは、差し迫る展示の準備で午前中、青、シルバーのスプレーを交互に使用、ペイントしており、また面倒だったのでそれをマスクをせずやっていたため、作業場に舞った霧状塗料を大量に鼻呼吸していたから、と推察でき、という事は、その後の半日の間、僕は青の洞窟を二つ顔面に穿ったまま暮らしていたわけで、つまり歩く神秘的光景となっていたのである。

 女優が感涙するほどのものなのだから、どちらかと云えばプラスと考える事が可能、が今一度眺めてみると、寝不足が続いて眼は澱んでいるし、くまもガンガンにあり、塗料は顔全体にも微かに付着してあるので青白く、結果、もうこれはゾンビという方がイメージとしては近く、となると俄然マイナス、株価は暴落、あかんやん。